シナモン 2018.8.26

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「さくら通り」という大樹

その幹の中央に穿たれた

展望台のごときテラス

 

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「抹茶あづき」をおねがいしました

 

ときどきマップアプリに目をやりながら大栗川沿いの道を西に向かってあるいている。

陽は45°の位置にあって

猛烈な熱気を地上に落としている。

大通りにでた。

 

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店内のほぼ中央からさくら通りを見る

 

長時間太陽の熱に晒されたアスファルトは膨張し、ピザの上のモツァレラチーズのように今にも溶け出しそうだ。

 

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『シナモン』コーヒーメニュー

 

「さくら通り」は聖蹟桜ヶ丘の街に来てはじめて遭遇する通り。

センダックの絵本のなかにでてくるような、まるでお伽の世界のよう。

通りには両側にさくらの街路樹がしげっている。

ここは、春には花の雲でしょう!

アタマのなかに夢のような絵を描いてみる。

つぎのさくらの季節にはぜひ生きた時間のなかに立ってみたい。

さくら通りをまっすぐ聖蹟桜ヶ丘駅に向かってあるきだす。

 

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『シナモン』ティーメニュー

 

ゆっくり歩いてもほんの数分でしょう。

陽ざしのなかは早足で・・・

日陰に入ると遅足で・・・

 

通りの向こう側に🏣のマークの付いた大きな建物が見えてきた。

二階にあたる部分に「聖蹟桜ヶ丘郵便局」と書かれている。

そのとなりに木製の巨大な鳥かご(もしくは、アンギラスの巣)のようなオブジェが見えた。

なんだろう?

通りを渡って近づいてみると、

「シナモン」

と書かれた白いカンバンが・・・。

「シナモン」・・・?

思い出した!

きのう『cafe de fleurus 27』さんに来ていたご夫婦からお店の情報を得ていた。

「シナモン」はカフェ(喫茶店)です。

 

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『シナモン』冷たいドリングにアイスクリームをトッピング

 

入ろうか・・・?

どうしようか?

迷った。

さっき『mametora』さんを探すとき、

炎天下をさんざんあるき回ったのですこし疲れていた。

それで改めて『シナモン』さんを訪ねよう。

アタマが冴えているときはほとんどないけど、

疲れていないまっさらな状態。

そういう状態を引っさげて取材を試みたい!

そう考えたからだった。

 

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『シナモン』焼酎メニュー

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『シナモン』ワインメニュー

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『シナモン』ドリンクセット

 

砂漠の街を旅あるいた若い頃、

朝から・・・炎天下の白昼はカフェに避難して・・・夕方暗くなるまであるきまわったものです。

それでも疲れというものを感じませんでした。

しかし、いまは・・・体力なくなりましたね。

 

「よろしかったら、どうぞ」

気がつくと、『シナモン』のドアの前に女性が立っていた。

優しそうな人だった。

1分後にはクーラーの効いた店内にいた。

ながいため息をもらす・・・

 

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『シナモン』大人の黒かき氷

 

ノドが渇いていた。

ノドの渇きは、すぐに用意してくれた冷たい水が癒してくれる。

いまは、もっと冷たいものをお腹におさめたい。

抹茶のカキ氷をおねがいしました。

意識は店内のすみずみへと飛んでいた。

太い梁が天井の真ん中を通っている。

立派な街路樹の枝が伸びてそのまま梁へとつながっているかのように。

カウンター

ソファー席

テーブル席へと意識が移ってゆく。

LPが収納されているラックがわたしの背後にあった。

そのとなりにオーディオセットのラック。

いちばん上にターンテーブル。

それを覆っている透明なプラスチックのケースに視線が移ってくると、そこでとまった。

このターンテーブルでLPを聴くのですね。

エボナイトの溝をたどって針が奏でるやわらかな懐かしい音の振動を聴きたい。

デジタルが作りだす0と1の研ぎ澄まされた金属的な音ではなく、

肌をなでるような空気の波動を感じたい・・・。

これでドナルド・ベイリーのハーモニカの演奏『ソーインラブ』を聴くんだ!

この曲を最後に聴いたのは・・・

そうだ・・・

20年以上前になるかもしれない。

 

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『シナモン』すべてのお料理にコーヒー or 紅茶をセットできます

 

「いいお店ですね」

自然にでたすなおなことばだった。

「わたしで三代目になります」
(店主さん)

ぼんやりと目線を一点に据えたまま改めて店内を見わたしてみる・・・。

「このテーブルは当時からずっと使われつづけているものです」
(店主さん)

老舗旅館の廊下のようにピカピカに磨かれたテーブルはお店の歴史を象徴しているようだった。

気がつくとカキ氷がわたしのテーブルに置かれていた。

しまった! 

わたあめのようにふわりとしたカキ氷の山が・・・半分の高さになっていた。

「カキ氷、足してきますね」

そう言って、店主さんは半分になったカキ氷の器を持ってカウンターの向こうに消えた。

その顔に、面倒くさいという表情はなく、むしろ愉しそうにみえた。

はじめに感じた印象はあたっていた。

 

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楽しそうに会話する二人の女性

 

カフェは、どのお店も例外なくメニューの作成にはチカラが込められている。

カフェのメニューを見ると、そのお店の特徴、個性、工夫が反映されていることがわかる。

数ページのこのなかにそのお店の ヒ・ミ・ツ が隠されている。

メニューのページ上の文字に焦点が当てられ、視線が連続する文字の列を移動している・・・そこに意識を集中させている自分に気づく。

メニューに視線が置かれたまま、無意識のなか手がカメラに伸びていた。

「メニュー、撮ってもいいですか?」

無意識のまま、声が出ていた。

この問いかけをお店の人にすると、返事をくれない場合もある。

それは当然とも思える。

だけど敢えてわたしは訊く。

この・・・相手への配慮を欠いたゆがんだ人間性。

自分を抑えられない病的なまでの身勝手な自分。

メニューはエキサイティングな素材だから・・・。

理屈では解かっていも、終わりのない理由をつくりだしては、これを実行してしまうということの著しくバランスを欠いた性格。

そして―

 

店主さんは「いいですよ」と応えてくれた。

すぐとなりの席に小さな男の子を連れたお父さんがいた。

だから、カメラはバックから出さないつもりだった。

まづいな、と思いながら・・・、

・・・身体は動いていた。

 

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きのうの夕方、陽が沈むころ、『cafe de fleurus 27』のデッキの上をシラサギが北の方へ飛んでゆくのを見た

 

お父さんは、子どもに

「帰ろう」

そう言って、レジの方へ向かった。

平静をとりつくろいながらも、わたしは打ちひしがれていた。

打ちひしがれながら、メニューを撮りつづけた。

自分はこんな思いをしながら、ここでなにをしているんだろう・・・。

そして、腰をあげた。

 

「また、来てくださいね」

店主さんは、そう言って優しくわたしをおくりだしてくれた。

「また、来てもいいですか?」

意味のないことばをのこして、

わたしはお店をあとにした。

 

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『シナモン』外観

 

『シナモン』
(しなもん)

基本情報:

所在地:多摩市東寺方 1 – 2 – 12

営業日 : 月~土曜日()

定休日 : 日曜日

営業時間:11 : 00 ~ 21:00

でんわ: 042 – 375 – 8347

喫煙席:全面喫煙可

オープンから:40年

最寄駅:京王線「聖蹟桜ヶ丘」駅徒歩約6分
    京王線「聖蹟桜ヶ丘」駅より 269 m

ホームページ:

 

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